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2009年 10月 10日
9.Oct.2009 (Fri)
東京オペラシティにて、パウル・バドゥラ=スコダのソロリサイタル。

1927年生まれのウィーンのピアニストで、フルトヴェングラーとの共演歴もあるという大ベテランの、初来日50周年を記念したコンサートとのこと。何となく気になっていたが、演目にベートーヴェンの32番があるのを見つけて、行くことに決めた。32番を生演奏で聴くのは初めて。

80歳を越えているというのに、ピンと背筋を伸ばしてご登場、おもむろにハイドンのヴァリエーションを弾き始める。この時点でいきなりすっと引き込まれてしまう。80歳のおじいちゃんがこんな曲弾いてくれたら、カッコいいよなあ。

同じくハイドンのハ短調のソナタが続く。ミスタッチは目立つが、もちろん大きく音楽を邪魔しているわけでもなく、気持ちよく音楽は流れていく。ここで少し眠気が襲うが、乗り切って次の32番に。

人によってはやたらと重々しく弾かれる序奏もテンポよく入り、アレグロ・コン・ブリオに入ってからはかなり早いテンポで飛ばしていく。大丈夫か?と思ったらやっぱりタッチに関しては怪しいところが多々聴かれたのだけど、たとえば昔のギーゼキングの録音なんか聴くと、指は回らなくともとにかく突っ走るのが伝統的な弾き方だったのかななどとも思うわけで、これでいいのかもしれない(そしてそれを正確に弾き切ったのが1956年のグールドの録音だった・・・のかな?)。

アタッカで第2楽章のアリエッタに入るところなんかも、なんかいい。そしてここからもずいぶんと速いテンポでさくさくと変奏が進み、終盤の綺麗な高音のピアニシモでころころと転がす箇所は、粒の揃った音を延々と聴かせていく。そして、最後の和音を弾き終わりしばしの余韻を会場全体で味わおうというところで・・・明らかに空気を読まないフライング拍手を始める輩が!! もう台無しです。あなたコンサートホールに行く資格ありません。

休憩後、マルタンの幻想曲(バドゥラ=スコダに献呈された曲とのこと、当然初めて聴いた)で前衛的な曲でもぴしっと決めるところを見せ、最後にシューベルトのアンプロンプチュ(Op.90)。きっと70年くらいずっと弾き続けているんじゃないかとか思っているんだけど、テンポにときおり緩急をつけながら手馴れた感じで聴かせていく。第2曲がまたまたかなりの速度で弾かれ、ショパンのワルツみたいに聴こえたのがちょっとびっくり(あとで彼の古い録音で確認したが、こんなに速くはなかった)。第3曲と第4曲は昔自分でも弾いたことがある曲なので、これまたある種の感慨を持って聴く。

アンコールは3回、たぶんすべてシューベルトの小曲かな(例のヘ短調の「楽興の時」もやった)。拍手に呼び戻されてはちょこっと弾いて舞台袖に消えていく老マエストロ。

まあ、テクニック的な話はしてもしょうがないし、けっして満員というわけでもなかったし、チケット代もかなりリーズナブルだったりもしたしで、別にクラシックファン的にマストなコンサートというものでもなかったのかもしれないけど、張り詰めた緊張感とは無縁の、暖かい雰囲気に溢れたいいコンサートだったので個人的には幸せなひと時を過ごせたと思っている(それにつけても32番の余韻だけはもっと味わいたかった)。同じ会場で昨年見たシフのときとは全然テンションが違ったというか。

たとえばナチュラルな感じが逆に印象的だったアゴーギクがウィーン流なのか彼独特のものなのかは僕には語れないけど、きっと長年かけて染み付いた語り口、歌わせ方みたいなものが随所に聴かれていただろうし、そういう味は今風ではないのかもしれない。またまたベートーヴェンのソナタ全集に取り掛かろうとしているなんて話もあるみたいだけど、来月来日するデームスと並ぶ最後?のウィーンの香り漂う名匠がどんな境地を聴かせてくれるのかは、すごく倒錯した意味で興味あるところだ。


Beethoven: Piano Sonatas

Gramola

今月再発される最初のベートーヴェン全集(1969年)。アナログのボックスなら持ってるんだけど、この値段なら買ってもいいかも。
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by deadfunny | 2009-10-10 00:58