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2005年 08月 16日
15.Aug.2005 (Mon)
サマーソニックのために来日したザ・ラーズが単独公演を行うため、渋谷・AXへ。

すでに大阪・東京でライブをしてはいるものの、やはり伝説が現実のものとして目の前に現れるその瞬間の昂揚感といったらたまらないものがある(ジョアン・ジルベルトの初来日のときとかさ)。小ぢんまりとしたステージに登場したリー・メイヴァーズに対する思いは、みんなそれぞれだっただろう。「お帰り~」だったり「今まで何やってたんだ、こら!(笑)」だったり「嗚呼、生きていてよかった」だったり。僕はというと、15年近いブランクなど何もなかったように、ザ・ラーズなるもののありのままを見せて欲しかった。前回の来日公演は、チケットが取れずに見られなかったのだ。

気負うことなくステージが始まる。唯一のアルバムと同じく「Son Of A Gun」がオープニングナンバーだ。切れ味のあるリーのアコースティックギターが鳴り、続いて訛りの強いダミ声が「If you want~」と歌い出した瞬間、僕らのそれぞれの思いは静かに弾けた。歓声は盛り上がるが、嬉しさが先でどう反応したらいいのかわからないような様子も感じられる。ジョン・パワーのコーラスが心地よく纏わりつき、リーもいきなり快調だ。音楽活動はほとんどしていなかったはずだが、声は衰えていないようで、最後まで15年前のアルバムを思わせた。

あとの二人のメンバーが当時のメンバーかどうかはわからない。リードギターは、テクニックはあまりないが、ラフなカッティングがかえってバンドに合っている。ドラムはなぜか立ったまま叩き、これもまたローカル・パブ・バンド的な佇まいに貢献している。自身のバンドで4枚くらいアルバムを出したジョンがきっとミュージシャンとしてのキャリアは一番積んでいるのだろうが、お客さんがリーを見に来ていることをちゃんとわかっているので、張り切って引き立て役を引き受けている感じだ(が、貢献度は高い)。

「There She Goes」などのヒット曲はもちろん、アルバムの12曲全曲+B面曲、未発表曲など17曲で本編終了。MCもほとんどなく淡々とステージは進行したが、最後の「Looking Glass」を一所懸命に弾き語るリーの姿に、いったい何がこの男を音楽の前線に復帰させたのかいろいろと思いを巡らせ、涙しそうになってしまった。アルバム一枚だけを残しただけでシーンから消え、僕らは勝手に伝説に、神に祀り上げてしまっていた。でも、その伝説を引き受けてもう一度表舞台に出る決心をつけさせたのは何だったのだろう。単純にお金? でもそれにしちゃ本気だった。少なくとも15年ものブランクは露呈するだろう。若手の抬頭や彼らからのリスペクトに突き動かされて? それもあるかもしれないけど、でもそしたら新曲やっててもいいよねえ(未発表の2曲は、昔からのレパートリーでもある)。

やっぱり、神格化された自分やザ・ラーズなるものに決着をつけたかったんじゃないのかしら。以前、アルバムの出来には不満がある旨こぼしていたそうだが、オアシス以降影響をもろに受けた多くのバンドが輩出した今、後の世代に「これが本当のザ・ラーズなのだ!」と示せる音をついに見出し、それを見てもらう機会が到来したというか。勝手な憶測だけど。

アンコールは「There She Goes」をもう一回演奏したあと、「オアシスに捧げます」とリー自らがMC、ザ・フーの「My Generation」を荒々しくカバーして締め括った。この曲はサマソニ(大阪)でもやったそうだし、オアシスもサマソニで演奏したらしい。ちなみに会場にもオアシスのメンバーの姿があったとのこと(遭遇せず)。

そして、アンコール時にリーが見せた笑顔が、なんとも嬉しかった。新作があるのか、このメンバーでの活動が続くのか、僕はまったく知らないが、彼らの音楽に力をもらった僕らが、精一杯の声援と拍手でお返しをし、それを彼らが力にしてくれたのだとしたら、こんなに光栄なことはない。そして、スタジオ録音のアルバムは、ちょっとしばらく聴き返さないでおこうと思う。

LOST LA'S 1986-1987 - CALLIN' ALL
The La's
Viper LP008, 2001
ISBN : B00005MKVS




追記:
http://blog.livedoor.jp/the_las_timelessmelody/
こちらのブログで、各公演のセットリストが見られます。

In Search of the La's: A Secret Liverpool
M. W. Macefield / Helter Skelter Ltd

こんな本も出てたのね。読んだ人いる?

by deadfunny | 2005-08-16 00:06


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