2009年 08月 25日
24.Aug.2009 (Mon)
デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの初期メンバー、ケヴィン・アーチャー率いるThe Blue Ox Babesの音源集「Apples & Oranges」がリリースされていたのを知り、購入。

Apples & Oranges

The Blue Ox Babes / Cherry Red


1988年にGo! Discsから3枚のシングルをリリースしたが、予定されていたアルバムがお蔵になった(見本のカセットだけが出回った)ということまでは知っていた。シングル2枚はずっと持っているが、もう一枚リリースされていたことはだいぶあとになって知ったものの手に入れられずにいた。

レコードが発売された時期だけを見るとデキシーズがとっくに解散した後のバンドにも見えるが、今回のCDブックレット掲載のライナーノートを読むと、なかなかに切なく辛い話があり、音楽的に恵まれながらも報われない悲劇というのは存在するのだと改めて思う。

英文ライナーをざっと一度読んだだけなので誤認もあるかもしれないが、1980年にデキシーズを脱退したアーチャーはすぐにもブルー・オックス・ベイブズを結成、バンドの新しい方向を見出せずにもがいていたケヴィン・ローランド率いるデキシーズを尻目に、フォークとソウルの融合をヴァイオリニストなどのメンバーを迎えて形にしつつあった。が、デモテープを聴かされたローランドが(ファッション含め)そのコンセプトをパクることを決意、ヴァイオリニストのヘレン・オハラを引き抜いて「Come On Eileen」で世界的な大ヒットを飛ばすにまでいたる。

アーチャーとしてみたら、ここで自分のバンドを売り出したところで「元同じバンドのメンバーだった奴が、方向転換して成功したデキシーズをパクった」と言われることは必定。相当な打撃を受けたらしく、バンドはいったん解散する。アーチャーは1983年にローランドにバンドへの再合流を打診されたが、蹴ったらしい。ローランドとしてみればアイディアをパクられた旧友への負い目もあったに違いないであろうことは、その後の発言で明らかになるがそれはまた別の話。

その後デキシーズが大リストラを敢行して3作目を作ったころ、元メンバーらがアーチャーと合流、ブルー・オックス・ベイブズは再び始動してライブを行うようになり、ついにGo! Discsとの契約に漕ぎ着けるが、結果が出なかったことで完成したアルバムは発売を見送られ、バンドも解散した。

僕が彼らの2枚のシングルを手に入れたのはたしか2回目の渡英のとき、1994年の話だったと記憶している。ヴァイオリンなどの入ったバンドサウンドは明らかに2作目のころのデキシーズそのままでけっこう気に入ってはいたが、今思えばたしかにもう何年か早くデビューしていたところでさほど高い評価は得られなかったかもしれない。逆に、1993年にケヴィン・ローランドがケヴィン・アーチャーからアイディアを盗用したことを認めたということが公になったからこそ、今こうしてCDリリースが初めて行われ、そこに正当な評価が与えられるというものなのだろうか。だとしても、アーチャーにとっては大きな悲劇に対するせめてもの慰めにしかならないのだろうが。

結局この今回のアルバムを誰に勧められるかと言われれば、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのファンは絶対聴いておけ、としか答えようがないものな。ジミー・パターソンのトロンボーンソロがまんまデキシーズな曲とか、やっぱりちょっと複雑な気持ちになる。

"I stole the style of music that was Kevin Archer's, for which I am deeply sorry and regretful." - Kevin Rowland, 1997
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by deadfunny | 2009-08-25 01:53


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